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【漁業】なぜ日本はクロマグロの漁獲枠を守れないのか?

昨年から、クロマグロの国別の漁獲枠が導入されました。日本は去年の7月から今年の6月までの漁獲を、30kg未満の未成魚は4008トン、30kg以上の成魚は4882トン以下に抑えることに合意したのですが、漁獲量が超過することが確実な情勢です。このような事態になったのは、漁業者のモラルよりは、むしろ、漁獲規制の仕組みに問題があると筆者は考えます。
現行の漁獲規制とその問題点

まず、日本の漁獲規制の仕組みについて説明します。水産庁は日本を6つのブロックに区切って、漁獲枠を配分しました。さらに、主要な県には県ごとの枠を定めました。(詳しくはこちらをご覧ください)
https://rpr.c.yimg.jp/im_sigglSsPfywozPfbDlXOnH_tZg—x768-n1/amd/20170420-00070068-roupeiro-001-17-view.png

水産庁は、ブロックの漁獲量が枠の7割を越えると注意報、8割をこえると警報、9割をこえると特別警報を出します。さらに、枠に達する見込みになると自粛要請をします。漁獲枠の残りが少なくなった時点で、警告をして漁獲にブレーキかけてもらえば、漁獲枠を越えることはないという判断です。残念ながら、そうはなりませんでした。

ブロック毎の漁獲実績はこちらにあります。今年は、九州と太平洋西部にクロマグロの稚魚の漁場が形成されたので、これらのブロックでは漁獲枠を超過しています。一方で、魚が北上していないので、日本海北部では与えられた枠の半分も消化していません。

特に超過が大きかったのは、南太平洋ブロックの共有部分です。東京都、愛知県、三重県大阪府兵庫県岡山県広島県山口県徳島県香川県大分県、宮崎県の12都府県には50トンが配分されたのですが、すでに100トン以上超過しています。共有枠が超過の大きな要因になっていることがわかります。

操業自粛要請が近いとわかれば、漁師は獲り控えるどころか、ますます張り切って獲ります。「もう獲れなくなるなら、今のうちに獲っておこう」とラストスパートをかけます。注意報や警報を出すことで、ブレーキをかけるどころか、火に油を注いでしまうのです。残り少ない枠に大勢が群がり、結果として漁獲枠を越えてしまいました。

同じことがおこったのがミナミマグロです。南半球に生息するミナミマグロも乱獲で資源が減少して、漁獲量を規制することになりました。日本は、早獲り方式で漁獲枠の運用をしたので、漁獲量が漁獲枠を超過して、国際問題になりました。他国から非難を浴びて、懲罰的に日本だけ10年間漁獲枠半減になったのです。これが契機となって、ミナミマグロには船毎の個別枠が導入されて、それ以降は日本もきちんと漁獲枠が守れるようになりました。クロマグロでも同じ失敗を繰り返して、国際的な信用を失墜させているのは残念というほかありません。

早獲り方式では漁獲枠を守るのは至難の業です。先の記事で紹介したカナダの事例でも早獲り競争時代は恒常的に漁獲枠を超過していましたが、個別枠になってからは枠の超過は皆無です。「あなたは1トンしか獲ってはいけません」と言われたら、漁業者はルールを守ることができます。でも「みんなで100トンしか獲ってはいけません」と言われたら、早獲り競争になってしまい、そのルールは守られません。漁業者のモラルではなく、規制のやり方に問題があるのです。

早獲り方式は、漁獲枠の配分が不公平になるという別の問題も抱えています。漁期の最初に魚群が来遊したエリアでは漁獲枠の消化が進みます。一方で、来遊が遅れたエリアでの獲り分は無くなってしまいます。こういう状況では、計画的な漁業や、ブランド化を推進することは不可能です。後先考えずに、多く獲った漁師だけが得をする、非合理的なシステムと言えるでしょう。

※一部引用
https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20170420-00070068/